優秀賞
SEE MEDICINE
制作者：project SEE MEDICINE
作品概要：
呼吸をリアルタイムに砂絵として描き記し客観的に見ることができる装置。
さらにこの装置は入力した波形をアウトプットすることができるため、導きたい呼吸の砂絵も描くことができる。
呼吸は通常無意識化で行われているが、呼吸の様子を可視化して見せると呼吸を意識的に行おうとする反応が出ることが知られている。そして可視化の内容次第で、円滑な呼吸を促進することも阻害することも発生する仮説が提唱されている。
この仮説のもと、このマシンが生み出す砂絵をただ眺めることで自分の呼吸に意識を向けさせることができ、自分の呼吸をコントロールさせつつ徐々に理想的な呼吸へ導くという体験を生み出し、「見る」ことが治療になる展望を提示する。
身体情報の測定機であるが、出力に「砂」という物質性を入れることで電子モニターにはない「可塑性」が加わり、身体へのフィードバックに積極的になれるのがおもしろい。応用範囲の広いインターフェース。
土佐 信道
心に起きたことは体に影響し、体に起きたことは心に影響する。これはよく言われることだが、その中でも呼吸はとくに心や体からの影響が大きい。隣に誰がいるか、それだけでも大きく変化する。この作品は、その呼吸を可視化する装置だ。
吸って吐くという単純に見える呼吸にも、実は宇宙誕生からその人の現在に至るまでの物語がすべて内包されている。その物語がペンデュラムによって描き出され、唯一無二の砂絵が誕生する。その美しく深みのある砂絵に自身もまた共鳴しながら、そして、隣の体験者とも共鳴しながら、砂絵は変化していく。そうして共鳴が繰り返されるうちに、自分と自分以外を分離していたあらゆる境界線は薄れていき、すべてが自分と感じられる世界へと運ばれる。人間を含めた宇宙自然との一体感とやすらぎを与えてくれるすばらしい作品。
中村 一