優秀賞

680

秩序ある無秩序

制作者:鈴木 完吾

作品概要:

一見すると動かないだろうと思ってしまう乱雑に配置された歯車。しかし、ハンドルを回すことによって無秩序にも感じられた歯車たちがかみ合い、一つの秩序を見せるキネティックアート。5つの機械花がそれぞれの周期で咲く。

機械は、「論理的な部品」を、「論理的に組み合わせる」ことで、ちゃんと動く。それはどこまでも論理的だ。作者の海底のサンゴを思わせるような有機的な造形は、計算された歯車の組み合わせでできている。手で回す一個の歯車の回転が、神経と筋肉のようにひろがって、全体の動きになる。複雑に見える人間の行動も、わたしたちの社会も、じつはこの作品のように「論理」がある。この作品はCADで設計して工作機械で削り出している。つまり、そこには「ユニット」があり、どんどん増殖できる。サンゴ礁のように、部屋いっぱいに増殖した風景を見てみたい。

土佐 信道

現代においては、花を無秩序に咲かせることはCGを使えば容易である。しかしそれでは「どうせCGだから」と思われてしまい記憶に留まることはない。一方、この作品は、リアルに動き、しかも、その動きがずっと見ていても飽きない不思議な魅力を持っているから、多くの人々にとって新鮮なものに映るのではないだろうか。

コンピュータの進化と共にだんだんと実体のないものに囲まれていく現代においては、リアル感やアナログ感があるものを人々は求めていくだろう。作者には今後も、そうした鑑賞者の感性に直接働きかけるようなものを生み出し、それを多くの人から手に入れたいと思われるような作品づくりを期待したい。

中村 一