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2017年度ものづくり文化展
最優秀賞 受賞者インタビュー

2017.12.27

2017年度ものづくり文化展最優秀賞受賞作品『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』

パチンと手をたたくと、『せんちゃん』が登場。目の点滅のリズムに合わせて手を叩くことで、『せんちゃん』も次第にノリノリな仕草を見せてくれる。手を叩くリズムがずれてしまうと、『せんちゃん』は引っ込んでしまう。外装のほとんどは非金属で作られているが、エイジング塗装を施すことで、金属が風化したような仕上がりになっている。

人格を感じられたり、こちらを伺っているんじゃないかと思えるものを作りたい

『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』の作者の熊谷 文秀さん

青森県出身、札幌在住。53歳。
北海道教育大学札幌分校特別美術科卒。
アトリエ・ヌーボー・コンペ 福田繁雄賞&坂根巌夫賞、パルコ アーバナート パルコ賞 & 伊藤隆道賞、朝日現代クラフト 優秀賞、KAJIMA彫刻コンクール 模型入選、UBEビエンナーレ 実物製作指定など受賞歴多数。彫刻作品から、からくり仕掛けの作品までその表現は幅広い。

――― 最優秀賞を受賞した感想は。

いやぁ、めちゃめちゃ嬉しかったですね(笑)

――― ものづくりの技術はどのようにして習得されたのでしょう。

大学が教育大学なのですが、その中の特設美術科というところ入っていて、木材工芸を専門にしていたんです。そこで小さいクラフトワーク的なことをちょこちょことやっていて、基本的な機械の使い方はそこで学びました。そこから直接こういった『せんちゃん』のようなものを作る技術は、もうやりながらなんとなくですよね。

仕事でアートワークや、科学館的な施設に設営される仕掛けものを作っていた時期があり、出来もしないのに「やれます!」と(笑)。そこで電気を勉強しました。あまり勉強と意識したことはないんですけどね。この仕事をこなすには身につけないとできないですから、必要に迫られて覚えることを覚え、作り。ということをやっていました。

――― ものづくり文化展についてどのようなイメージがありますか?

メカトロ二クスに特化した賞で、メカメカしいイメージをずっと持っていたんですが、中を覗いてみるとコミカルな作品もあれば、メカっぽい作品もあり、いろいろあって面白いなと思っていました。

――― その中でも、熊谷さんの作風は他にないものですね。

そこできっと勝負できるかもしれないなと思っていました。全く評価されないか、すごく評価してもらえるか、きっとどっちかだろうなと。メカとしては他の人たちに全然敵わないですし、加工の精度も時計を作ってらっしゃる方などに比べたら全然大雑把ですし。味わいの部分で評価してもらえたら嬉しいなと思って応募しました。

――― 審査会では、「お客さんを巻き込むインタラクティブな作風が素晴らしい」という意見がありました。

作品を見せたときに「わぁ!」と喜んでもらえたら嬉しいというのが根本にありますね。「これを作るんだ」とそれに向かって行くだけではなくて、その先に誰かが喜んでくれる姿があって、そこを目指してるんだと思います。自分がやりたいことと、見てもらってる人が喜ぶカタチが同じ方向性だったときはとても嬉しいです。

――― 今、インタラクティブ作品というと、光や音を使った映像的な作品のイメージが強いですが。

そうですね。でもやっぱり、モニターの中で完結してしまうと少し物足りないかなと感じるところがあって。例えばこの『せんちゃん』が実際に、物がなくアニメーションでモニターに出ていたとしたら、あんまり面白くないと思うんです。物の持つ魅力というか、そこにあって触れられるなかで行われるというところの魅力は捨てがたいですね。そこにあるだけで人格を感じられたり、こちらを伺っているんじゃないかと思えるものを作りたいですね。

――― 現在の作風になった背景はなんですか?

自分は悪ふざけにはあまり魅力を感じないんです。自分が悪ふざけができないので(笑)。そうではなくて、なにか大真面目に行われている中で、少しだけズレてるっていうのが面白いなと感じることが多いんです。だからこういう工作にしても、つくりは極力真面目に、隙がないように作り、でもなにかちょこっとコミカルというところが面白さを引き立てるんじゃないかと考えていますね。真面目にふざけてる(笑)。

誰しもが、なにかしたり、話すことで笑いを生んだり、喜んでもらえたら嬉しいと思うことってあると思うんですが、自分はそういう風にして笑いを生むのが苦手なんです。好きではあるんですけど(笑)。自分ではできないので作品に託す。それで喜んでいる姿を横で見ながら「よしよし」と思うんです(笑)。

熊谷 文秀『タユトウ』

――― 熊谷さんのこれまでの作品には人を楽しませる作品がある一方で、彫刻的な作品もありますが、そういった作品は別の考え方ですか?

極端には違わないんですけど、自分がかっこいいと思う形を純粋に作っているんです。人に見せると気持ち悪いと思われたりするかもしれないですが、自分が作りたい形なので割り切って好き勝手作っています。『せんちゃん』も勝手なんですけど(笑)。笑いではなく、純粋にかっこよさや美しさの形を求めたのがこのシリーズです。

例えば、戦闘機が並んでたらかっこいいと思いますよね。でも、そこに込められた意味を考えると、人を殺すための道具であったり、相手を制圧するための道具なので、とても認められない存在です。それでも、やっぱり子どもが見てもかっこいいって思うのは、形がいいということだと思うんです。彫刻を作るときは、そういう理屈抜きの形で「お、いいね」っていう世界を作りたいと思ってます。

――― 今後、どのようなものづくりに取り組んでいきますか?

両方ですね。人を楽しませるものと、形を追求したもの。笑いを生むような作品はそれはそれで魅力を感じるので作っていきたいですし、それとは別に形を追求した彫刻にも魅力を感じているので。

――― 次回の応募者に向けてメッセージをお願いします。

自分が楽しんでものを作っていれば、きっとその楽しさは人に伝わるんじゃないかなと思います。

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