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クリエイターたち ~活用事例~

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【2018年度ものづくり文化展】最優秀賞受賞者インタビュー

2018.12.25

2018年度ものづくり文化展最優秀賞受賞作品『RUNNER/ランナー』

作品上部に取り付けられた4つのリングが順次自動回転を行い、リング背後に取り付けられたLEDがストロボ発光、覗き口を覗き込むことでゾートロープのような映像を映し出す。映像では、リングを追うごとに成長していく人間の姿を垣間見ることができる。外装のほとんどは塩ビ管などの非金属で作られているが、エイジング塗装を施すことにより金属が風化したような仕上がりになっている。

人からどう見られるのか、というのは常に頭の中にあります。

『RUNNER/ランナー』制作者の熊谷 文秀さん

1964年生まれ、青森県出身、札幌市在住。
北海道教育大学札幌分校特別美術科卒。 アトリエ・ヌーボー・コンペ 福田繁雄賞&坂根巌夫賞、パルコ アーバナート パルコ賞 & 伊藤隆道賞、朝日現代クラフト 優秀賞、KAJIMA彫刻コンクール 模型入選、UBEビエンナーレ 実物制作指定など受賞歴多数。彫刻作品から、からくり仕掛けの作品までその表現は幅広い。

――― 2年連続最優秀賞受賞ですね。感想を聞かせてください。

去年の受賞があるので、今年は最優秀賞はないだろうな、と思いながら出したので正直ビックリしました(笑)。こうして評価していただけてとても嬉しいです。

――― 受賞作の制作の経緯について、教えてください。

もともと、札幌駅と大通公園をつなぐ「チ・カ・ホ」という地下歩行空間でやるグループ展に出展する目的で作りました。そのグループ展は数年前からずっと続けてきたことで、前年度受賞作の『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』もそこで展示する目的で作ったものです。『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』のときは「音」がテーマだったんですが、今回は、時間軸という意味の「Time Axis 」をテーマにみんなで作品を作りました。

熊谷 文秀『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』 パチンと手をたたくと、「せんちゃん」が登場。目の点滅のリズムに合わせて手を叩くことで、ノリノリな仕草を見せてくれる。ものづくり文化展2017 最優秀賞受賞作品。 作品詳細

――― 前年度受賞作の『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』が鑑賞者を巻き込む参加型の作品だったのに対して、今年度受賞作は鑑賞型の作品ですね。

「チ・カ・ホ」は人通りの激しいところなので、これまでは歩行者の目を引くために参加型の作品を作っていました。『せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)』も鑑賞者に手を叩いてもらって参加してもらうことで盛り上がってもらって、それを見た他の歩行者も集まってくる。そんな状況をイメージして作ったんです。ですが、今年は人が滞ってしまう、という理由で「参加型はやめてくれ」と言われて(笑)。

今回は、「大人がゆっくり鑑賞できる空間」にしたいとリクエストをいただいたので、自分の中にあった人生をフィルムに例えるイメージから、フィルムが回転して人生を振り返る、鑑賞型の作品を作りました。世代を追って、赤ちゃんが子どもになり、大人になり、おじいちゃんになり。という一連の時間を、ゆっくり感じてもらえるような物を目指して作りました。

――― 制作に際して留意したことは。

雑な仕事はしたくない、ということは常に考えています。ちょっと怪しいところはあるんですが(笑)。姿勢としては、ちゃんとしたものを作ろうと、常に意識しています。

――― 実際の反応はどうでしたか?

「形がおもしろい」と言って喜んでくれる人もいれば、出てくる映像に釘付けになっている人もいれば、「赤ちゃんのお尻が可愛い」と言ってくれる人もいて。意外だったのは、高齢の方がじっくり見てくださることでした。おじいちゃん、おばあちゃん世代の方がじっと見ているんです。それも1回や2回じゃなくて、10日間の展示期間中そういう場面に遭遇することが何度もありました。中には「本当に感動した」と言ってくれる人もいて。流れている映像はシンプルなものなんですが、たぶん映像そのものを見て何かを考えているわけではなくて、自分の中にフィードバックして人生を振り返るきっかけになっているのかなと感じましたね。

――― 今年度受賞作と、前年度受賞作にも用いられている「エイジング塗装」を使った表現にはどのようなこだわりがありますか?

なんとなくのイメージなんですが、作品の存在が実は大昔に活躍した時期があって、それが現在でも続いている。というようなバックボーンや、キャラクター性を感じられればいいなと考えています。あと、形もキャラクター性を感じられるような形を意識して作っています。例えば、脚元が台座よりも少し足のように見えたりとか。物なんですが、キャラクター性があって、そのキャラクターの人生があって、みたいな世界観を作れればいいなと。意外と塗装する前の段階って、かっこよくないんです(笑)。エイジング塗装をすることで全体がまとまって、表面にある奥が見えてくる、そんな感覚がありますね。

塩ビ管やMDFなどの非金属で作られた外装にエイジング塗装を施すことで、見事な錆の風合いが表現されている。

――― 制作に際して苦労した点を教えてください。

今回初めて「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を使ってみたんですよ。去年こちらにお伺いした際に「Arduino(アルデュイーノ)使うといいよ」というお話を聞いたので。今までシーケンサしか使ってこなかったので、どんなものかなと。Raspberry Pi(ラズベリーパイ)は「Python(パイソン)」というプログラム言語を使ってプログラムするんですが、これが初めての目論見で、やっぱり覚えられないんですよね。昨日書けたはずのコードが今日は書けないとか(笑)。「なんだこのカンマは!このカンマの意味はなんだ!」とか(笑)。そんなプログラミングの苦労はありました。プログラムは若い頃にやらないとダメなんだって実感しましたね。

――― 今後、どのようなものづくりに取り組んでいきたいですか?

実は今『Dialog machine』というものを作っていて、この『RUNNER/ランナー』はそれの実験機なんです。
「バラバラな文字の集団から、意味のあるメッセージが発生していく様を可視化する装置」なんですが、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)を使って膨大な文字データを処理する必要があって、文字もピタッと止めなければいけない。できるんだろうか...って(笑)。今はもう、Python(パイソン)の知識も真っ白に戻っているので、変数とはなにか、というところから勉強し直さなきゃいけないですね(笑)。

熊谷 文秀『Dialog machine』 バラバラな文字の集団から、意味のあるメッセージが発生していく様を可視化する装置。
※画像はイメージです。

――― これからものづくり文化展に応募しようとしている人にアドバイスをお願いします。

アドバイスを言えるような者ではないんですが、強いていうなら、自分の場合は展示をするということを目標にものづくりをしているので、人からどう見られるのか、というのは常に頭の中にあります。こういう仕掛けを入れれば、こう楽しんでもらえるかな、とか、こういう見せ方をしたらかっこいいと思ってもらえるかな、とか。自分の中だけで完結するものづくりも楽しいですが、第三者から見てどういうものになっているか、ということを考えてみるのもいいんじゃないかと思います。見てもらうことって、すごく成長に繋がったりしますから。第三者のフィードバックを受けて「あ!ここをこうやったら...!」という発見があったとすると、それは自分自身の新しい技術の発見だったりするかもしれない。人に見られる状況を創造することまで含めて、ものづくりを考えてみるのもいいんじゃないでしょうか。

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