2016年05月17日
東京都恵比寿駅から少し歩いた場所にコンクリート打ちっ放しのスタイリッシュなビルがある。aircordさんの事務所はこのビルの3階と4階、事務所への階段からして「只者ではない感」が漂うオシャレな内装。取材前だというのに少し緊張してしまった。
社内にはRD300、AST200をはじめとしたオリジナルマインドでもフラッグシップモデルとして名を連ねる機体を置いていただいていた。機体はそれぞれご自作のかっこいいBOXの中に設置されていた。
aircordさんはサイトを一目見ればわかると思うが(記事下部にリンクあり)、ともかく「おもしろい」ことをしている会社だ。遊び心に溢れていながらも、クリエイティブのプロフェッショナルとしての凛々しさも感じる。こうしたクリエイティブの第一線で活動をされているチームの現場で当社のKitMillを使っていただいているということ自体が、ある意味ものづくりの価値観が変わりつつあるそれを指しているように感じた。ものづくりと聞けば、職人的な世界ではあったものの、一部からは3Kなどと呼ばれて酷評をされてしまうような時代もあったからだ。そうした意味で辛い時期を乗り越えて経営を続けてきた当社にとって、aircordさんのような現場で製品が使われていることはなんとも言えない嬉しさがこみ上げてくるのであった。
aircordさんの企画された作品を一部ご紹介したいと思う。
まずは「LYRIC SPEAKER」である。この作品はスマフォの専用アプリから音源をスピーカーに送ることで、自動的に歌詞やモーショングラフィックを生成し、音と一緒に視覚をも楽しませてくれる画期的なプロダクトだ。
amazarashiのMVにも使われるなど巷では何かと話題になっている。
続いて「WORDS BAND」。これは例えば音楽のライブなどでお客さんが手につけてライブに参加する。そうするとステージ上でアーティストが歌っている歌詞がリアルタイムで腕に巻かれたWORDS BANDに表示されるというものだ。そう、ライブなどだと歌詞って意外と聞き取りづらいものなのだ。音楽のライブに限らず、そうしたイベントの参加のあり方自体をクリエイトしてしまうような頼もしいプロダクトである。WORDS BANDに関するとある記事ではaircordのメンバーである岩崎さんがこんな嬉しい言葉も言ってくれていた。
「ケースの制作には3Dプリンター、レーザーカッターとともに "デジタルファブリケーションの3種の神器" と呼ばれるCNCミリングマシンを採用しました。一般的な積層タイプの3Dプリンターを使うと、表面がザラザラしたものになり、後加工が必要ですが、CNCミリングマシンで素材の塊から1点ずつ削り出すことによって、美しさと強度を兼ね備えたケースの制作ができるというわけです。」「本当に、時代が変わると思いますよ。ずっとこういう加工をやりたかったし、CNCミリングマシン用にCADデータの調整を試行錯誤しながら、楽しんで作っている実感があります。」
引用元:http://edison-lab.jp/showcase/aircord/prototype/
ここで使っていただいたCNCミリングマシンというのが、当社のRD300である。
もう一つだけご紹介しよう。「電気味覚フォーク」である。これは電流で舌を刺激し「塩味」を感じさせてくれるフォークだ。高血圧などでふだん塩分の多い食べ物を我慢している人も、これを使えば十分に味が濃く、塩味を感じるお料理をおいしく楽しめる。このような機能もコンセプトもたいへん素晴らしいプロダクトの製作にも当社のRD300を使っていただいたとのことで、たいへん光栄に感じた。
このように様々な独創性あふれる作品を制作されているaircordさんだが、長らくものづくりに関わってきている当社から見て「おー!」と思わされることがあった。それは女性スタッフがCNCを扱っていたことだ。ものづくりの世界は今でもまだまだ男性の割合が多く、女性の参入者は多くない。そんな中で、aircordさんでは女性スタッフの方もが当社のCNCを慣れた手つきで操作してくれていた。しかもRD300にはクーラントが装備されていたのだが、これは彼女による改造だと言うから驚きだ。専門書を読み込み独学でCNCを扱うようにまでなった彼女。話を聞いてみたところ
「組み立てることからはじまり、CAMの扱いなど、はじめは何もわからなかったけども、楽しくてどんどんはまってしまった。一つのことができるようになると、すぐに新しい課題が出てくるので、奥が深い。CNCを扱う上で最も大切なのはメンテナンスだと思う」
となんとも頼もしいコメントをいただくことができた。そんな方がCNCを慣れた手つきで操作し、こんなに嬉しい言葉を言ってくれたというだけでも当社としてはものづくりの時代の変化を感じることができ、感無量なのであった。
aircordさんは自社のロゴにも使われている書体をオリジナルでつくられている。その書体をポリゴン化し物理的なプロダクトに起こしたりもしている。ここでも当社のRD300をご活用いただいていた。
また、取材中aircordさんから当社のものづくり文化展の話題が出たのが「こういったクリエイティブな会社にも認知いただいているんだな」と素直に嬉しく思えた。ものづくり文化展も年々盛り上がってきているので、さらにこうしたハイレベルなチームの方たちからのご投稿などあればさらに盛り上がることだろうと思う。
aircordさんは遊びを仕事に変えていた。クリエイティブプロデューサーの橋本さんにお話しを伺ったところ「常に自分たちが面白いと思える仕事をしたいと思ってやってきた。」とも言っていた。橋本さんは印象として、とてもクールな方であった。ただ、クールでありがなら「こだわり」は人一倍強くそうした意味で熱量も持っているそんな感じがした。青い炎のような人だ。
そして、こうした橋本さんとは対照的に見えたのが同チームの岩崎さんだ。岩崎さんはクールというよりかは、温かく柔らかい感じの方に思えた。チームの中での相談役のようなそんな印象を受けたのであった。このお二人のバランスがaircordの遊び心とセンスに溢れた素晴らしい作品やプロジェクトを支える柱になっているのではないかとそんな想像力を働かせながら、興味深く取材をさせていただいた。
仕事と遊び。私たちはそれらを分けて考えがちだが、aircordさんにとっては仕事=遊び(本気)なのだろうなと、そう思わされた。本気の遊びだからこそ技術の探求にも余念がなく、プロとしての意識もしっかりと持っているのだろう。そうしたスタンスは理想的な在り方に思え、私たち取材班は羨ましくも感じたのであった。aircordさんは今日も本気で遊んでいるのだろう。今後の活動から目が離せない。
aircord WEBサイト:http://www.aircord.co.jp/
美しくて温かみのある作品を作り続けるParadiseさんに会ってきた! < クリエイターたち ~活用事例~トップ > 「買えないのなら自分で作ろう!」あの変形ロボットはその思いから始まった。