入選

Swiper01
Swiper02

最強のピザカッター

制作者:なんとか重工

作品概要:

『まだ片手持ちの貧弱なピザカッターでピザの上を何度も往復してるのかい?』

『この両手持ちで体重が乗るデザインの”最強ピザカッター”を使えば例えハンバーガー並みの分厚いピザでも一刀両断さ!!』

今回製作したピザカッターのデザインはバイクのプロアーム(片持ちスイングアーム)をモチーフにしてデザインしました。切削部品らしく、それでいて各部品でテイストの違ったデザインになるように曲面を強調したり、ポケット肉抜き、貫通の肉抜き、スポークを互い違いに配置したり、様々な切削加工らしいデザインを組み合わせての構成です。

「おまえはバカか?」と思わず言ってしまう作品だ。明和電機に言われたくもないと思うが、ほんとに技術の無駄遣いだ。なぜピザを食べるために、ここまで大仰な装置が必要なのか。加工と労力にどれだけの経費を使っているのか。同じことができる道具がダイソーで100円で売ってるぞ・・・。しかしちょっとまて。なにかを食べるという行為は「作法」だ。たとえばお茶を飲むという、飲食の世界には「茶道」があり、そこでは何千万円もする茶道具がわんさかあるではないか。そんな高級な茶道具を使うからこそ、茶道の「作法」が生まれる。このピザカッターを使えば、いつかは「ピ道(ピザ道の略ね)」が生まれるかもしれない。「ドミノ流」とか「ピザーラ流」とか流派も生まれるかもしれない。そうなれば、この作者は利休のように「ピ道」の始祖だ。我々は歴史的瞬間を見ているのかもしれない。

土佐 信道

人間というのは、合理的な生き物ではない。無駄だとわかっていても、意味がないとわかっていても、それに夢中になったりする。それこそが「人間らしさ」だ。たとえば、これまでクルマを運転することは、どこかに移動するための「手段」であった。しかし自動運転が当たり前の時代になれば、人が運転することは、「運転することそのものが目的」になるだろう。それと同じで、これからの個人のものづくりは、「作ることそのものが目的」となる時代が来るかも知れない。そうした時代にこの作品は、少年の心をくすぐる要素が満載であり、作ることそのものの楽しさを感じさせてくれる作品だ。

中村 一