2016年02月17日
私たちはその作品を見たとき、驚きを隠せなかった。個人向けの工作機であるKitMillを使い、機械式腕時計を自宅でつくってしまうとは・・・ものづくり文化展2015にて最優秀賞にも輝いたしたーじゅさんとその作品を取材した。
私たちは機械式腕時計という作品の印象から、したーじゅさんは「30代後半くらいの方だろうか??」と思っていた。しかし、当社に訪れたしたーじゅさんを見てびっくり。なんと25歳だという。話を聞いていくうちに、その「前に前に進む姿勢」と何より「つくりたいからつくるんだ」というプリミティブなものづくりを目指す実直な人間性とエネルギーが伝わってきた。
機械式腕時計はともかくその部品が「めちゃくちゃ小さい」のである。小さいというだけで、それを機械部品として加工し、組み立てる難易度は段違いに上がってしまう。部品の強度も弱ければ、組み立てるにもこまかな調整が必要で神経を使うからだ。当然、加工精度もそれに見合ったものが求められる。
こうした高度な製作の全行程を自宅で、しかも個人向けのCNCで作り得たということは「革命的」なのである。私たちはそう思ってしたーじゅさんを当社に招いたのだが、ご本人はこの作品が「革命的だ」ということにはあまり気づいていない?ようであった。というより、機械式腕時計をつくってしまったことのスゴさ自体にはあまり関心がないようなのである。
私たちが「機械式腕時計を自宅でつくってしまうことはほんとにすごいことだ」と言ったのに対して、「自分のつくった機構をいつも手元で見ていたかったから」と、そんな真っ直ぐな言葉を返してくれた。
企業でのものづくりは一般的には利益主義である。だから当然その現場では、最低限のスペックを効率良く満たすことが求められる。それが悪いとは思わない。我々はそうしたつくり手たちの努力によって、今の社会に生きているのだから。しかし、したーじゅさんはそれが「少し疑問であった」という。
「自分がつくりたいからつくる」「効率の悪いやり方でもつくること自体を楽しみたい」企業で機械設計の仕事をする傍ら、そんな思いがしたーじゅさんの中に芽生えていた。だからこそ、機械式腕時計を自作するにあたり市販の機械式腕時計をバラすなどの行為はあえてしなかった。それをしてしまうと「自分で辿り着く過程を飛ばして、答えがわかってしまうからつまらない」のだという。
25歳ともなるともはや「ものづくり」に対する考え方が、先人とは少しだけ違っている。
昔は部品加工ひとつするにしても仰々しい加工設備が必要であったのに対して、現代はつくることが身近になっているからだろう。そんな環境の中でものづくりを学んできた若者たちは「つくりたいからつくる」という考えを昔よりも自由に思い抱きやすいのではないだろうか。
「自分のつくった機構をいつも手元で見ていたかったから」という動機で、25歳の若者が機械式腕時計を自宅でつくってしまったのである。このことの「革命的価値」がおわかりいただけるであろうか。
私たちはこうした若者と出会ったことそれ自体が、ものづくりの世界がすでに変わっていること、またこれからもっともっと自由な方向に「変わっていくこと」の証明であるような気がしてならない。こうした「小さなつくり手」がこれからの時代を担っていくと私たちは信じているのである。
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