2013年04月22日
ものづくり文化展2012の受賞作品選考の際に、その美しさが社内で話題となったことから、"これを作ったのはどんな方なのだろう"という素朴な疑問を抱いたことがこの取材のきっかけである。取材を進めてゆく内に、自らの好奇心に基軸を置いたその積極的な生き方に感心させられた。
真壁さんは学生の頃は工学研究室に所属していたそうだ。その時に工学実験よりも、その実験装置をつくることにのめり込んでしまい「自分はものづくりが好きなのかもしれない」という予感を感じたという。実は真壁さんは今でこそものづくりを当たり前に"こなしている"が、この頃にはまだ業界外にいたのだ。
卒業後、社会人のスタートは高校理科の非常勤講師であった。しかし高校教師という道は「違う」と思い進路変更。その後、その持ち前の好奇心からPC関係、スキーのインストラクター、システム管理ソフト制作、WEBデザインなど様々な職を経験することとなった。
この中でWEBデザイナーをしていた時期に三年前につくったサイトがネット環境の変化で見れなくなるという経験をしたことで、少しずつ環境に左右されない原始的な作品制作へと向かうようになる。また、この時期にはデジタルメディア作品も手掛けていたが、様々なアーティストと競い合い、展示をしてゆく中で「制御の入っているものは鑑賞者が何か本能的に拒否する。」ということを感じたのだそうだ。それからは「もっとプリミティブなものをつくりたい」という強い思いを持つようになった。この後あの3.11の大震災による電力不足を経験したことでこの思いはより強固なものとなったそうだ。
こうした考えを原動力として作品制作に取り組んだことが、その後必然的にものづくりの世界に深く入ってゆくことへと繋がった。「プリミティブなものをつくりたい」と思い、ものづくりをはじめてから2年間程は頭の中でイメージが膨らむばかりで実際のものにすることは技術的にできない苦しい期間が続いた。3年目にしてようやくイメージを形にできはじめてきたのだそうだ。
そうした本人の強いこだわりから、作品「時の可視化」にもプリミティブな動力源であるゼンマイが使用されている。実際に手に取って作品背部のゼンマイを回してみると、手に伝わってくる抵抗がなんとも心地よい。また、ことゼンマイにおいては作品自体にエネルギー源が組み込まれているため、それ単体として自立をする。こうしたことに人が安心感を覚えるのはやはり人情であるように思う。
当社としては、取材を行う前まではその作品の見た目から「機械仕掛け」ということに強く関心がいっていた分、真壁さんの口から「プリミティブな物へのこだわり」という見解が出てきた時には多いに共感ができた。しかし、その背景に多くの思索が内包されていることにまでは当然思い及んではおらず、興味深くお話しを聞かせていただいた。
"人はプリミティブなものへの関心を源来持っているのかもしれない"
少なくとも、私たちにそう感じさせてくれる素敵な作品と話であった。
取材のために遠方よりお越しいただいた真壁さま、あらためてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
高専間交流で生まれるものづくりの輪 < クリエイターたち ~活用事例~トップ > ハッカー夫婦が世界を救う!秋葉原にFabオフィスを構える久川さんにお会いしてきた。