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前作を土台から大改善させてきた!!実用レベルに達した機械式腕時計「part2」

2017年04月11日

ものづくり文化展2016にて昨年に引き続き作品「機械式腕時計part2」で「最優秀賞」を受賞された、したーじゅさんに取材をさせていただいた。

ものづくり文化展2015でも前作となる機械式腕時計(part1)で最優秀賞を受賞されたしたーじゅさん。25歳の青年が独学で機械式腕時計を自作した!とスタッフ一同驚かされたのが記憶に新しい(前回の取材記事はこちら)。そんなしたーじゅさん、あれからわずか1年間の間にさらなる改良をくわえた機械式腕時計part2で今回のものづくり文化展2016にご応募いただいた。パッと見の外観がすでに大きく異なる今作だが、「改善」というよりも「土台から再構築」しなおされていることがよく見るとわかる。その徹底的な改善度からしたーじゅさんの探究心が滲み出て伝わってくるようだ。

▲「機械式腕時計part1」

▲「機械式腕時計part2」

外観に関して言えば、針の青色も電気炉で焼いて色をつけたり(バイクのマフラーが色を変えているのと同じ原理だ)、ツールマーク(刃具の軌跡)による装飾模様を入れたりなど前回よりもビジュアライズが施されている。だが、実際には外側からは見えない中身の部分にこそ、徹底的に改善が施されているのが今作である。鑑賞者は完成された全体の外観や印象につい目が行きがちだが、製作した本人の意識は鑑賞者のそれとは少し違うのだろう。ボディのさらなる小型化、ギミック自体の再設計から、それに合わせた歯車一つ一つの加工、素材の見直し、軸も昨年に比べ1/2の細さに近い0.1mmまで細くするなど目を凝らして見なければ見えない細部にこそ改善が見られる。外観の美しさが向上したこと以上に、こうした中身の徹底的な細かな改善によって、part1からpart2になり日常での実用レベルにまで作品の完成度を上げられたことがもっとも大きな進化点だと言える。したーじゅさんも、今はこの腕時計を日常使いで毎日使っているとのことであった。

それにしても、したーじゅさんは腕時計の製作を始めて2年弱、年齢もまだ26歳である。とんでもない探究心と技術力だ。今回の取材で「前回の機械式腕時計は主にどこが悪かったんですか??」とスタッフが訪ねた際にも「主にすべて悪かったです。」と一言だけで答えてくれたのも印象深かった。一言であっさりとご自身の前作を全否定するスタンスに、したーじゅさんの職人としての探究心が垣間見える。

取材をしていく中でしたーじゅさんの常人離れした技術力の核心に触れることがあった。それは、スタッフが「実用レベルの機械式腕時計を作り上げるのは本当に凄いことですよ。」としたーじゅさんに言うと「それが...そもそも機械式腕時計をつくることが一般的に難しいと言われていることすら知らずに僕つくってきていたんですよ。独立時計師の存在も前回の文化展2015の際にはじめて知ったくらいでして笑」と笑いながら話してくれたことだ。ものづくりに限らず、世間一般の常識では「難しい」「一握りの人しかできない」「困難」などと言われていることによって、余計にそれが本来よりも難しいことになってしまっているのかもしれない。と言うことだ。したーじゅさんの場合も「機械式腕時計をつくることが難しいと言われていることすら知らなかった」とのことで、見事にその作品をここまでの完成度に持ってきている。

もちろん、したーじゅさんの技術力あってこその成果であることは間違いないが、仮に「機械式腕時計はそう簡単に個人が作れるようなものではない」と言う世間一般的な考え方で、したーじゅさんがいたならばここまでの作品完成度はなかったようにふと感じてしまったのである。世間一般で難しいと言われているものでも、本人がそう思っていない(もしくは難しいと言われていることすら知らない)状態で物事にあたれば、探究心のおもむくままにトライ&エラーを繰り返すことができ、またその過程すらも楽しく無我夢中に没入していけるのではないだろうか。そうしているうちに、作品や成果が生まれる。そんなことを思わされたのであった。

前回のものづくり文化展2015の際に「なんで機械式腕時計を作ろうと思ったんですか??」と聞いたことに対して「自分が作ったメカをいつも身につけていたいと思ったからです。」としたーじゅさんは答えてくれた。今回それについてあらためて聞いて見たところ「製作動機は昨年から全く変わってませんよ」とのことであった。自分が抱いたシンプルな衝動に対して長期間に渡ってそれをぶらさずにpart2まで製作してきているその一貫したメンタリティには驚かされた。人は心の生き物である。そして心は揺らぐものだ。ゆえに、心に高い熱量を抱くことはできてもそれを維持することは容易なことではない。したーじゅさんの素晴らしい作品の影には、こうしたプリミティブな動機へ揺らがぬ意志があるのかもしれない。社会的意義や他者貢献を考えることも素晴らしいことだ。だが、したーじゅさんのように「自分が身につけたいから腕時計をつくる」と言った自分本意の動機は、その若さも相まってとても強力な追い風となっているのだろう。

実はしたーじゅさんは機械式腕時計の製作過程をご自身のyoutubeにもアップされている。

これについては「『俺もつくれるんじゃないか』と思って、ものづくりに参入してくる人が増えてほしいという思いがある。」としたーじゅさんは語ってくれた。まさに、当社も同じ思いでいる。もっとものづくりが多くの人にとって身近なものになり、したーじゅさんのような存在を見ることで勇気を受けたつくり手たちが、より多くの独創的な作品を生み出してくれるのではないかと、文化展を主催している立場としてもそれがまさに楽しみなのである。したーじゅさんのyoutube動画のように優れた作品が製作される生の過程を見られる動画は、これから作品に挑戦しようとしているつくり手にとっても何よりの教材になると思う。

取材の最後にしたーじゅさんに今後について伺ったところ「来年はトゥールビヨンに挑戦したい。今作も含めてこれまで作ってきた機械式腕時計はむしろそのための準備期間と考えてきた。」と話してくれていた。果たしてどのような作品を来年はご応募いただけるのであろうか。今からその完成が楽しみである。

作品ページ

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