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ハッカー夫婦が世界を救う!秋葉原にFabオフィスを構える久川さんにお会いしてきた。

2016年02月04日

当社のものづくり文化展にも作品をご投稿いただいている、久川さんにお話を聞いてきた。久川さんは、ハッカーのご夫婦で株式会社鳥人間という会社を営まれている。

株式会社鳥人間のFabオフィスがあるのは、秋葉原駅から徒歩10分程度の場所だ。秋葉原にオフィスを構えたのは久川さんいわく「会社近くに大きな倉庫を持っているようなものだから」という理由から。オフィス自体も当社のKitMill CIP100KitMill Qt100をはじめ、様々な工作機械や設備環境を整えて小さなファクトリーのようにつくられていた。ご自身の人脈のネットワークや、立地環境などを最大限に活かしてものづくりを営む久川さん、その自由な生き方と独創的なアイデンティティに触れてきた。

久川さんの生業はプログラマーである。あらゆるものをハックして「スマホ連携」させてしまうその高い技術力が、広告業界などから注目されて仕事を請け負っているという。他にもwebサイトの制作やプログラミングをはじめ、広告やサイト会員の管理システムの構築も行う。

そんな久川さんだが、実はもう一つの顔を持っている。仲間と協力し合いながら、プログラミングと合わせてハードも手がけることで製品自体を「自主開発」していることだ。しかし、これがただの製品ではない。大げさに言うと「多くの人命を救う可能性のあるもの」なのだ。

それは何かというと「DNA増幅器」である。...私たちには聞き馴染みのないこのDNA増幅器とは何なのだろうか。文字通り「DNAのクローンを増やす装置」であるという。たとえば、人の口内などを綿棒でひとかきもすれば、その人のDNAを採取することは誰でもできる。しかし、これが想像以上に小さいのだ(0.01mm以下)。だから採取はできても目視することができない。このためDNAからその人の状態を測るには、1.採取する→2.数を増やす→3.各実験や着色をする→4.効果を観察する、という過程を踏まねばならないのだ。この2.数を増やすの時にDNA増幅器が必要になるのである。

しかしDNA増幅器は、一般家庭や医療機器の限られた地域などでお目にかかることはなかなかできない。つまり、たとえばマラリアなどの検査を受けたくても受けられなかったり、自分の体が病に侵されてるかもしれなくてもそれを証明=治療を受けることが難しい国や地域が数多く今でもあるということだ。その原因の一つが、久川さんがDNA増幅器を手がけるまで、それは40万~100万円もするとても高価なものであったからだ。しかし、久川さんのDNA増幅器を使えば、一般の方や難民地域の方々が自宅で家族や自分のDNAから身体検査を行うことができるようになる。もちろんバイオ教育などにもチカラを発揮するだろう。

こうした「すごいもの」を作り出してしまっている久川さんだが、ハードに手を出す時手始めに、当時自宅に置いてあった木箱の醤油入れに基板を入れ込みカウンターに改造したのがキッカケであったという。これがまた渋くてかっこいい。なんでもまずは手を動かして形にしてしまう久川さんの姿勢には脱帽である。

久川さんの作り出したものはとても価値のあるものだ。しかし、久川さんの魅力はその製品だけに留まらない。久川さんはご自身で開発したDNA増幅器をなんとオープンハードウェアにしてしまったのだ。これは筆者の勝手な予想だが、久川さんの取材中「今後もしかしたら医療が一般家庭にも入っていくのではないか」と思わずにはいられなかった。今は簡単な検査をするにしても病院にいかなければならない。しかし、久川さんのDNA増幅器をはじめ、もしかしたらこれ以外にもこうしたバイオ関係のオープンハードウェアがネット上でシェアされて行き、「Fabメディカル」のような独自のシーンをつくってしまうのではないか...そんな予感がした。少なくとも、それほどのことを思わされるほどに久川さんはパワフルに自由に生きていた。

私たちの時代はいま大きな変化を迎えている。これからの時代は「個人」「少数組織」が複雑なネットワークであらゆる価値を共有し合いながらモノやサービスをつくっていく時代になるだろう。今がまさにその移行時期だ。久川さんのように、たとえば「秋葉原を倉庫として考えてFabオフィスを構え、奥さんと二人で会社を経営しつつ、オープンハードウェアをつくりバイオ業界に革命を与えてしまう」という生き方も、こうした時代移行期の氷山の一角にすぎないのだと思う。

これからものづくりの世界は大きな変貌を遂げ、2022年頃にはその全貌を誰でも感じられるほどに魅力的なものになっていることだろう。ただ、私たちの世界は誰かがつくってくれるものではなく、私たちが「つくっていくもの」なのだ。久川さんの「目の前の問題を具体的に解決していこうとするその姿勢」にそんなことを感じさせられる取材であった。

撮影させて頂いた写真一覧はこちらからご覧になれます。
久川さんが実際にKitMill Qt100で加工した部品です。(Facebook)

後述:秋葉原での取材後、無類のFabミニ四駆好きの五味(当社開発部)とその面々は、「模型屋チャンプ」に飛び込んで行ってしまった。

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