事業内容
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保守部品.com事業のあゆみ

「動くものをつくる楽しさ」を提供したい

私たちは創業当初、自社オリジナルの機械系組み立てキットを提供する会社をめざすと同時に、中古のメカトロニクス製品(FA製品)の販売も積極的に展開していきたいと考えていました。それは、「動くものをつくる楽しさ」を提供したいという想いがあったからです。微弱な電気信号によって、メカがダイナミックに動き出す瞬間のワクワクと興奮。これはランプを点灯させたりブザーを鳴らしたりといった工作に比べて何倍もの感動があります。その感動を、ものづくりを楽しむ個人のお客様に届けたい。その想いでこの事業を始めました。

当時は個人のお客様にとって、メカトロニクス製品を手に入れることは困難な時代でした。特にリニアガイドやボールねじとなると、購入手段は皆無に近いうえに、どれも高価なため、気軽に買えるものではありませんでした。そこで私たちは、「中古品ならば手頃な価格で提供できるのではないか」というアイデアに至り、この想いを実現することを決意しました。それが1998年のことです。おそらく国内でいちばん最初にメカトロニクス製品の中古品販売をはじめたのは私たちです。

商品をサイトに掲載してみると、当初は一人で作業していましたから、出品量は少ないものの、多くの人に喜んでいただくことができました。というのも、当時はインターネットの黎明期で、ヤフオクさえ誕生していない時代であり、メカトロニクス製品は当社でしか販売していなかったからです。特に2005年頃からは、CNCフライスの自作ブームが起こり、そのおかげで直動機器やサーボモーター、ステッピングモーターは人気で売り切れが頻発しました。

▲ 1998年当時の中古品販売のページ。この頃はまだ、「カートに入れる」という概念がない時代だったため、商品をリストアップしただけのページだった。

▲ 2006年当時の中古品販売のページ。CNCフライスの自作ブームのおかげで直動部品が人気となり、売り切れが頻発した。

中古FA製品の新たな需要

CNCフライスの自作ブームのおかげで、私たちの中古メカトロニクス製品の売れ行きは好調でした。しかし、2010年ごろになると、そのブームもだんだんに下火になってきました。それに加えて、ヤフオクなどでもメカトロニクス製品の売買が日常的に行われるようになり、2015年ごろには、Amazonからも中国製のメカトロニクス製品が簡単に、しかも手頃な価格で入手できるようになりました。このため、当社の中古品へのニーズは低下し、私たちの役割は終わったと感じました。一時はこの事業を閉じることも考えました。

ただ、製品ラインナップの中で、あるカテゴリの製品だけは売り上げが落ちず、むしろ増えていることがわかりました。その製品とは、PLC(シーケンサー)や、サーボアンプでした。それらの製品は、「代わりが利かない」という性質を持っています。もし壊れてしまった場合、同じ型番の製品を入手できれば問題ないのですが、メーカーが既に生産を終了しており、入手不可能なことがあります。この場合、新しいモデルを購入し、プログラムやパラメータも合わせて変更するという方法が取れれば問題ありません。しかし多くの場合、早急な復旧が求められており、その時間と余裕がありません。早期復旧にはどうしても同一型番の製品が必要です。

その場合、多くの人は中古市場から入手しようとしますが、このとき、インターネットで型番を検索すると、かなり高い確率で当社に辿り着きます。私たちのWEBサイトには古いモデルのFA製品がたくさん掲載されているからです。これがPLCやサーボアンプの売り上げ好調の理由でした。製造業のお客様のニーズに偶然ながらマッチしていたのです。これを受けて、2017年には新たに別サイト「保守部品.com」を立ち上げました。それ以来、私たちの中古FA製品販売の業務はこちらのほうに多くの時間を割くようになりました。

そしてこの頃から、個人に向けた中古品の仕入れは少しずつ減らしていきました。今後もオリジナルマインドのECサイトにて販売を継続していますが、当社のオリジナル製品に関係した商品(材料やエンドミルなど)や、工業系大学の先生がよく利用してくださる直動機器や精密ステージだけに絞って出品していく予定です。しかし、昔も今も個人や学校に向けてFA製品を提供している業者は少なく、その中で私たちの役割は大きいと感じています。商品数は縮小しましたが、「動くものをつくる楽しさ」を今後も提供し続けられたらと思っております。

▲ 2023年開催の当社単独イベント「オリジナルマインドフェア」。個人向け中古品を販売したところ、県内外問わずたくさんのお客様がご来場くださった。

保守部品.comのこれから

振り返ってみますと、中古FA製品の販売は、その仕入れに大変な苦労がありました。創業当時は「メカトロニクス製品をリユースする」という概念すらない時代だったからです。当社サイトの知名度も低く、買い取り案内を出しても、仕入れに結び付けることは容易ではありませんでした。それでも、あちこちの工場をトラックで駆け回り、商品探しをしていた日々は懐かしい思い出です。そうした苦労もあった一方で、サイトに商品を掲載すると、わずか数分のうちに完売するといったことを何度も経験させていただき、その苦労が吹き飛ぶ瞬間でもありました。

それを思うと、個人向けの商品数を縮小したことはとても寂しく感じます。ですが、時代と共にニーズは変化していくものです。個人向けの中古FA製品販売を支えて下さったお客様に感謝しつつ、今後は製造業のお客様に向けて、生産終了品を販売する保守部品.comに注力していまいります。

保守部品.comの社会的役割は大きいと感じています。たった一つのFA製品でも、それがなければ、最悪は本体まるごと新しい設備に入れ替えなければならなくなり、部品交換で済むはずの修理代が莫大な金額に跳ね上がってしまい、場合によっては死活問題になることがあります。また、故障が発生するとその前後の工程も全てストップするため、停止時間が長引くほど損失は膨大となり、その損失が企業内だけに留まらず、広く社会にまで及ぶこともあるからです。

私たちが中古FA製品の販売を始めてから今年で、26年以上もの歳月が経ちました。この長い年月で培った技術を活かし、今後もより一層、製造業のお客様の生産設備を守るお手伝いをしていてまいります。中古FA製品の販売は、資源の有効活用、廃棄物の削減、環境負荷の低減にもつながります。この事業を通じて、持続可能な社会の実現にも貢献してまいります。

▲ 動作確認のようす。確実で丁寧な動作確認を徹底しています。

2024年3月 中村 一