2017年度 第7回 ものづり文化展 受賞作品

最優秀賞

せんちゃん(潜望鏡のせんちゃん)

制作者:熊谷 文秀

優秀賞

文字書き計時器 time castle

制作者:鈴木 完吾

aircord賞

Yunit5X RoboCupJunior2017 出場ロボット

制作者:多田 有佑

明和電機賞

文字書き計時器 time castle

制作者:鈴木 完吾

入選

GABU_lsprobo

制作者:taku8

1/12 ドラッグZ

制作者:木川 暁仁

ミニチュア金型

制作者:kazu

粉塵回収用サイクロン

制作者:kebari

電動インラインスケート(Ver.4)

制作者:沖川 豊

AUTODESK賞

立ち乗り型パーソナルモビリティ

制作者:CH1H160

DMM.make AKIBA賞

SPECTRON-Ⅰ

制作者:キンミライガッキ

FabCafe賞

I am ☆ Star (アイ アム ア スター)

制作者:高橋哲人 + モシ村マイコ

FabLab Setagaya at IID

デルタ型3Dプリンター RostockNano(仮称)

制作者:中野島ロボット

MONO賞

ロボット鉢植え

制作者:RoBoTeNa

審査員総評

橋本 俊行 & 岩崎 修

株式会社aircord

今回の審査にあたっては、誰かのために作る、というより自分の造りたい理想のものを形にした結果としての作品が多数集まって来ているところが、見ているだけでもとても楽しかったです。また、PC上のデジタルデザインツールだけでは見えてこない、自分の手を動かして形にしていく過程を経て初めて得られるだろう作品が多数あったところも印象的でした。
ただ、もっと人に見られるデザインを意識した上で、アウトプットにとことんこだわる作品も見てみたかったのも正直な所です。次回はそのような観点で制作された作品が更に多く応募される事を期待しています。

土佐 信道

明和電機 代表取締役社長

びっくりするような設計力と加工精度のある作品と、どこか詩的で「人間ってなんだろう?」と逆に問いかけてくる機械の作品がありました。どちらも魅力的ですが、今回は後者の方を僕はえらびました。

中村 一

株式会社オリジナルマインド会長

今回は開催時期や募集期間を変更したことから、作品が例年より集まらないのではないかと心配していましたが、過去最多の90作品が集まり、本当に嬉しく思っております。

みなさんは最近のものづくり産業の動きを見てどのように感じていますでしょうか。私は「人の心や身体に直接働きかける製品が増えてきた」と感じています。

日本では今、ロボット産業が活発化してきている中で、人の感情を理解できるロボットや、人の意志でコントロールできるロボットスーツなどが生まれてきています。これらの多くは、人の心を癒したり、身体機能を補強したり、ビッグデータを知識化するといったような人間自体に直接働きかけるものです。ロボットが「単体」のものとして開発されてきていたこれまでとは異なり、人とロボットが「共存し補い合う」ようなシフトが起こってきているように思います。つまり、人間の外側に置かれていた開発テーマが、ここ最近のものづくりでは「人間の内側へ」とアプローチをかけるような開発が主流になっているのです。今後この流れは加速してゆき、やがて脳の神経細胞をチップに置き換えることができたり、身体の機能をサイボーグに置き換えることもできてしまうかも知れません。

「サピエンス全史」の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏は“有機体の生命は、無機体の生命に置き換わるかもしれない”と語りました。この言葉を借りるならば、開発対象が人間の外側から内側にシフトしていく今の流れは、究極的にロボットが「人間そのもの」になるということを意味しているようにも思います。そうした「ポスト身体社会」ともいうべき社会へと向かう時代の流れの中で、私たち小さなつくり手たちは、今後どのような使命感でものを生み出していくのでしょう。…そんなことを考えながら、今回ご応募いただいたみなさんの独創的な作品を見ていました。するとなぜだか「天空の城ラピュタ/スタジオジブリ」の中でシータが物語後半で語った言葉を思い浮かべている自分に気がついたのです。

“今はラピュタがなぜ滅びたのか、私よくわかる。
ゴンドアの谷の歌にあるもの。

「土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春を歌おう」

どんなに恐ろしい武器を持っても
沢山のかわいそうなロボットを操っても
土から離れては生きられないのよ!”

ものづくり文化展にご応募いただいた作品に私は心温まるような安心感を覚えます。無機質なのに作者の心が宿っているようなそんな温かさです。シータの言葉を借りていうならば、「土から離れていない何か」を感じるからなのかもしれません。

私たちは、テクノロジーの目覚ましい進歩の中で、人間らしさを見失わないことをより試されるフェーズにこれから入っていくでしょう。人工知能やロボットが次第に生活の中に浸透していくに比例して、自分たち人間の「らしさ」をより深く問うことになると思うからです。小さなつくり手たちの作品には、今後のそうした時代に最も必要とされるであろうとても重要な価値があるように感じました。

今社会の潮流は、大手企業が莫大な資金と労力をかけて人工知能やロボット、通信インフラを進化させていく流れにあります。そうした働きかけによって、やがて私たちとロボットとの境界線も薄まっていくでしょう。しかし、私たち人間はどこまで行っても有機体であり、ロボットはどこまで行っても無機体です。

大手企業による最先端の技術開発が進む一方で、私たち小さなつくり手には、そうした企業とは逆にものづくりを通して「人間らしさ」に答える何かを生み出すという重要な役割があるのかも知れません。